和菓子の恩

卒業式シーズンですね。
昔から卒業式で歌われる定番の曲といえば、
仰げば尊し』や『蛍の光』。
 
最近は文語体の歌詞がわかりにくく、また恩着せがましい
ということで『仰げば尊し』を歌わない学校もあります。
しかし私は、伝統あるこの歌が嫌いではありません。
ただ、この歌を歌うときのルールを知らない人も多いようです。
 
歌詞の意味をよく考えてみてください。
誰が歌うべきかわかるでしょ?
 
1.仰げば尊し わが師の恩
 教えの庭にも はや いくとせ
 おもえば いと疾し(とし) このとし月
 いまこそ 別れめ いざさらば
 
2.互いに むつみし 日ごろの恩
 わかるる後にも やよ 忘るな
 身をたて 名をあげ やよはげめよ
 いまこそ 別れめ いざさらば
 
3.朝夕 慣れにし 学びの窓
 蛍のともし火 つむ白雪(しらゆき)
 忘るる まぞなき ゆくとし月
 いまこそ 別れめ いざさらば
 
基本的に、1番は卒業生が歌い、
2番は在校生が歌い、
3番は卒業生と在校生が歌います。
 
堂々と1番を歌っている先生を見ると、
この人歌詞の意味わかってないな、と恥ずかしくなります。
どうしても一緒に歌いたい先生は2番以降を
歌うのがよいでしょう。
“身をたて 名をあげ やよはげめよ”
などは、後輩に言われるより先生に言われたいものです。
 
仰げば尊し』の3番にも『蛍の光』にも
蛍と雪が登場しますね。「蛍雪(けいせつ)時代」という
受験雑誌もあるように、この二つは勉強熱心なことの
象徴になっていますが、その由来は中国にあります。
 
東晋の時代(紀元4~5世紀)のことです。
貧しくて灯りに使う油が買えない車胤(しゃいん)という青年は、
蛍をたくさん捕まえて絹の袋に入れ、その光で夜も勉強しました。
また孫康(そんこう)という青年は、窓の外に雪を積み、
雪に反射する月光で夜も勉強しました。
そしていずれも、のちに出世したといわれています。
「蛍雪の功」という言葉で知られる故事です。
 
蛍の光』の曲はスコットランド民謡です。
なのであのメロディーは欧米でもおなじみ。
賛美歌にもこのメロディーの歌があります。
日本では卒業式や商業施設の閉店を知らせるメロディー
として定着していますが、
欧米では、特に別れや終りの歌というイメージはありませんので
披露宴や誕生日に歌われることもあります。