ボッティチェリ VS ダヴィンチ

2大巨匠の展覧会に立て続けに行って参りました。
ここ数年ボッティチェリがよく来てますね。
2014年春の「ミラノ展」(Bunkamura)、秋の「ウフィツィ展」(東京都美術館)。2015年春の「ボッティ
ェリとルネサンス展」(Bunkamura)。
で、今回の「ボッティチェリ展」(東京都美術館)。
HP:http://botticelli.jp/

国内初の大回顧展と銘打っているだけあって、1枚や2枚じゃありません。大型作品がたああっくさん来てます!!
今回の目玉はチラシやポスターになっている初来日『書物の聖母』↓
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これぞボッティチェリ、という典型的な作品。文句なく美しい。
マリアの肩、青いマントの上に金の星が描かれていますね。これは
マリアが海の星(ステラ・マリス)にたとえられるからです。マリアの元の名前であるヘブライ語のミリアム(ミルヤム)は「海の星」を意味するとも言われ、マリアの頭上に星の冠が描かれていることもしばしばあります。
今回の展覧会ではボッティチェリの師匠であるフィリッポ・リッピ、弟子であるフィリッピーノ・リッピの作品も合わせて展示されているため、師弟間で互いに影響を受けていることがよく分かります

私が今回一番気になったのは『アペレスの誹謗(ラ・カルンニア)』。
古代ギリシアの絵画アペレスが描いた「誹謗」について書かれた文
章を元に、ボッティチェリがすでに失われたこの作品の復元を試みたもの。
アペレスはアレクサンドロス大王時代の宮廷画家で、彼についての
情報の多くはプリニウスの『博物誌』を典拠としています。残念ながら彼の作品はひとつも現存していません。
実はボッティチェリの有名な『ヴィーナスの誕生』もアペレスの作
品をヒントに描かれました。

これがその『アペレスの誹謗』↓
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寓意画です。
中央の手を合わせている若者は「無実」。無実の罪で王の前に引き
出されています。松明を持ち、彼の髪をつかんでひきずっている女が「誹謗」。その左に「嫉妬(または裏切り)」、右に「欺瞞」がいて、「誹謗」の髪を整えています。

玉座には「不正」。彼はミダス王のようなロバの耳をもち、その長い耳に右から「猜疑」が、左から「無知」が耳打ちをしています。王の前に立ち「誹謗」を導く男は「憎悪」。
画面左の黒衣の老人は「悔悟」。彼が横目で見ている裸体の女性は「真理」。

これはアペレス自身が、ライバル画家の讒言でエジプト国王プトレマイオス1世に対する陰謀に連座したとされ、処刑されかかったという事件に基づいています。
左端の「真理」は『ヴィーナスの誕生』のヴィーナスを彷彿とさせ
ますね。

さて見ごたえ十分の「ボッティチェリ展」に対して、「ダヴィンチ展」は本人の油彩作品は1枚だけ。まあそもそも寡作な人だから仕方ないですが。ほかはコーデックス(手稿)と素描です。その他はダヴィンチに影響を受けて、またはダヴィンチの作品を下絵にして描かれた、あまり知らない人々の作品群。
数の勝負ではないですが、やはり満足度としてボッティが上ですね
~。

目玉の『糸巻きの聖母』は行列が出来ていて、並ばないと最前列で見られないしくみになっています。英国外に持ち出されるのは77年ぶりだそうで、貴重な機会ですので、ここは並ぶべし!
また壁に展示されている手稿はファクシミリ版(精巧な複製)で、その左の方に展示された鳥の飛翔のページだけが本物です。こちらをしっかり見てください。

では春の注目展です。
●「カラヴァッジョ展」国立西洋美術館 3/1~
●「俺たちの国芳 わたしの国貞」Bunkamuraザ・ミュージアム 3
/19~
●「黄金のアフガニスタン ~守りぬかれたシルクロードの秘宝~
東京国立博物館 4/12~
●「生誕300年記念 若冲展」東京都美術館 4/22~
●「世界遺産ポンペイの壁画展」森アーツセンターギャラリー 4
/29~

秋にはクラナッハ展、ダリ展も控えています。

本日、「たびねす」に新記事が掲載されました!!
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