すごい。映画を。見た。

もしもあなたが、
ある日突然、
家族と引き離されて自分ひとり自宅に残され、
家から一歩も出てはいけない、
家族や友人と連絡をとってはいけない、
と命じられ、
命令にそむけば撃つ、
と銃を向けられたら、どうしますか?
 
家の電話線は切られ、パソコンもテレビもありません。
ときどき停電することもあります。
そしてそんな状況が、いつまで続くのか、
一体何年続くのか、
誰も知らないとしたら・・・。
 
 
 
8月22日・夏休み最後の日
映画
『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』
を見ました。
http://www.theladymovie.jp/
 
ご存知のように、2010年11月、断続的に15年にも及んだ
自宅軟禁から解放された、ビルマミャンマー)の
民主化運動の指導者です。
 
1991年にアジアの女性として初めて
ノーベル平和賞を受賞し、
今年の6月にその受賞スピーチが、本人によって
改めてなされたことは記憶に新しいと思います。
(受賞当時は軟禁されていたため、
かわりに息子がスピーチをしました。)
 
恥ずかしながら私は、この映画のことを知るまで
彼女にイギリス人の夫と二人の息子がいることを
知りませんでした。
 
イギリスで、家族4人、幸せに暮らしていた平凡な主婦が、
たまたま母親の看病のために母国に帰国した途端、
軍事独裁政権によって自宅に軟禁されてしまったのです。
 
それは、ビルマ独立の英雄である
“あのアウンサン将軍の娘が帰国している”
と聞きつけた民主化活動家たちによって、
民主化運動のシンボルにまつりあげられてしまったからでした。
 
しかし彼女は、父の遺志を継ぐことを決意し、
同士と共に戦います。彼女の夫もそれを支援します。
彼女が政治家として成長していくとともに
ますます独裁者の圧力は強まります。
イギリスにいる家族はビルマへの入国を許されず、
軟禁を解いてほしいならイギリスに帰れ
(でも二度とビルマには入国させないぞ。
政治活動はやめるんだな。←本音)と言われます。
 
ついには、
彼女の置かれた状況を国際社会に訴え続け、
彼女の身の安全を守ろうと東奔西走してくれていた
夫の死に目にもあえませんでした。
夫のマイケル・アリス氏は1999年に、
3年以上彼女と会えないまま、ガンで亡くなっています。

 
物心ついたときから、アウンサンスーチーさんといえば、
解放されたときと、軟禁されたときだけニュースになる人。
一体何をした人なんだろう?という感じでした。
 
大人になってビルマの歴史を学んでも、
彼女がこれほど壮絶な苦しみを味わっていたことは
想像もしませんでした。
 
映画なので、多少は誇張や演出があるでしょうが、
彼らの夫婦愛の強さと、
彼女の信念を貫こうとする勇気に胸を打たれました。
感動と、せつなさが交互に襲ってきて、
2時間13分の上映中、2時間くらい涙がとまりませんでした。
 
もっと早く見て、皆さんにもこの映画を
紹介していれば、と悔やまれてなりません。
(東京では上映が終了しつつあります。)
 
国際政治に興味がなくても、
一人の女性がどれほど深く夫に愛されていたかを、
ぜひこの映画で知ってあげてほしいです。