スペインに「スペイン語」はない?

スペイン語で「スペイン」のことをなんと言うでしょう?
 
そう、「エスパーニャ」ですね。
英単語の頭に“エ”とか“ア”をつけるとスペイン語っぽくなる場合があります。
スペイン   → エスパーニャ
ステイション → エスタスィオン(駅)
シュガー   → アスカル(砂糖)
スタディ    → エストゥディアーレ(勉強する)
 
では「スペイン語」のことをスペイン語では
まあ、普通は「スペイン人」とか「スペインの」と同様に「エスパニョール」・・・なのですが。

実は、スペイン人同士の会話では、そうは言いません。
スペイン語=「カステジャーノ」といいます。
直訳すると、「カスティーリヤ語」。
 
現在のスペインには、かつて多くの王国がありました。
中でもレオン、カスティーリア、アラゴンナバラの4つが有名で、現在のスペイン王国国旗にも、この4王国の紋章が描かれています。
 
スペインのあるイベリア半島は、8~15世紀の長きにわたり、イスラム教徒の支配下にありました。(平城京の成立ごろから、銀閣寺が建つころまでに相当。)
しかし数百年の戦いの末、ついにキリスト教国がイスラム勢力をイベリア半島から駆逐することに成功します。1492年のことです。

この戦いをキリスト教徒の立場から、国土回復運動(レコンキスタ=再征服)
と呼びます。レコンキスタの中心となったのは、カスティーリア王国とアラゴン王国が合併してできたエスパーニャ、すなわちスペイン王国でした。
 
以来、カスティーリア王国の言葉が、イベリア半島の共通語とみなされるようになり、
カスティーリア語が「スペイン語」となったのです。
ちなみに、このカスティーリア(城、の意)と言う国名はいわゆる南蛮人によって日本に伝えられ、「カステラ」というお菓子の名前になりました。
 
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しかし、イベリア半島のなかでもフランスに近いカタルーニャ地方の人々は独立心が強く、カタルーニャ王国が12世紀にアラゴン王国と合併(同君連合)してからも、独自の言語カタルーニャ語(カタラン語)を守ってきました。
 
カタルーニャの代表的都市といえば、バルセロナ
・・・つまりですね、
バルセロナの人は、普段スペイン語を話していないのです。
スペイン語ももちろん通じます。)
 
カタルーニャ地方では、道路標識や観光地の案内板など全てのものにカスティーリア語とカタルーニャ語が併記されています。
 
スペインではいま、首都マドリッドにオリンピックを招致しようという活動がなされていますが、スペインで五輪といえば
“この間、バルセロナでやったばっかりじゃん”
と我々外国人は思ってしまいます。
しかし多くのスペイン人にとってあれは、カタルーニャの五輪であって、スペインの五輪ではないそうです。
 
マドリッドグラナダには興味ないから、とにかくバルセロナだけ行きたい!
ガウディ建築三昧したい!!
という方は、スペイン語だけでなく、カタルーニャ語を少し勉強して行くと、地元の人たちと仲良くなれますよ。