本当にあった〇〇な話:その3

ショートストーリー  「本当にあった〇〇な話」:その3(最後)
 
数年前のこと。

電車の中で塩野七生さんの
ローマ人の物語』の文庫版を読んでいました。
カエサルガリア遠征が終わろうとする
あたりの巻でした。
 
朝の混雑した通勤電車の中。
狭い空間ながら、隣りに立っている女性も
文庫本を読んで・・・うん?
なにやら見覚えのある紺色の表紙。
隣りの女性が持っているのは
まさしく『ローマ人の物語』ではありませんか!
おお!

感激して思わず声をかけていました。
「一緒!一緒ですね!!」
「え?」
彼女はキョトン。
あ、そうか、と私はあわててブックカバーを外し、
彼女に表紙を見せました。
「私も読んでるんです。」
「あぁ!」
顔を見合わせて、ふたりともにっこり。
 
私「いまどのへんですか?」
女性「いえ、まだ読み始めたばかりなんです。」
よく見ると彼女は1巻を持っていました。
「そうですか。私はいま、ガリア遠征です。」
そのときちょうど、私が下車する駅に電車が到着。
「先は長いですけど、お互いがんばって読みましょうね!!」
そう言って私は電車を降りたのでした。