『終戦のエンペラー』

8月7日 
映画『終戦のエンペラー』を見ました。
 
日本にやってきたマッカーサーが、部下のひとりである
フェラーズ准将に命じて、昭和天皇に戦争責任があるかどうか
を調査させるという内容です。
 
私はこの映画を見るまで、主人公のボナー・フェラーズ准将を
知りませんでしたが、実在の人物です。
そして結論からいうと、彼の調査と報告が、日本の天皇制を
救ったともいえます。つまり天皇が連合国に裁かれることも、
処刑されることもなかったのは、彼の働きのお陰です。
GHQで唯一の親日派とされる彼は、のちに日本政府から
勲章を送られています。
 
ただし、劇中に登場するフェラーズの日本人恋人アヤや、
フェラーズを陥れようとするリクター少将は架空の人物です。
 
今回見ていて、おっ、そうだったか、と思ったのは、
玉音放送が事前にレコードに録音されていた、ということです。
なんとなく、イギリスのエドワード8世の退位演説や、
フランクリン・ルーズヴェルトの炉辺談話のように、
天皇がラジオのマイクに向かって生で原稿を読んでいるイメージが
あったので。
 
そして降伏に反対する軍人の一部が、放送前にそのレコードを
奪って破壊するため皇居を襲撃した、ということにも驚きました。
 
物語のクライマックスは、有名なあの写真が撮られた会談です。
日本人が直接お姿を見ることさえ禁じられている現人神の隣りに、
一軍人に過ぎないマッカーサーが無作法に突っ立っている写真。
この写真は当時の日本人に衝撃を与え、敗戦を実感させました。
GHQという名の新しい神による支配が始まったのです。
 
この両者の会談の場面を見て、私は『太陽』という別の映画を
思い出しました。ロシアのソクーロフ監督の作品です。
同様にマッカーサー天皇の対話を映像化しています。
 
さて、この『終戦のエンペラー』ですが、皇居が映るシーンをのぞき、
すべてニュージーランドでロケが行われたそうです。
焼け野原の東京も、アヤの伯父が暮らす日本家屋も、
皇居の中の部屋も、回想シーンに出てくる戦前のアメリカの場面も、
全部ニュージーランドに作られたセットだそうで。
時代考証を踏まえた再現力がすばらしいです。
 
この映画の発案者でありプロデューサーである奈良橋陽子氏は、
実は、昭和天皇に仕えた宮内次官の関屋貞三郎(映画にも登場)の
お孫さん!
同じくプロデューサーの野村祐人氏は彼のひ孫(奈良橋さんの息子)。
ちなみに奈良橋さんはゴダイゴの『ガンダーラ』や
モンキーマジック』などの作詞者だそうです。
知らんかった~。