意識と無意識の間に遊ぶ

8月8日
新宿・損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の
「〈遊ぶ〉シュルレアリスム
~不思議な出会いが人生を変える~」展に行きました。
(8月25日まで)
 
シュルレアリスムとは、第一次大戦後のヨーロッパで
巻き起こった芸術運動です。
直訳するとシュル(超える)レアリスム(現実)となりますが、
現実を超えるというよりは、
“目に見えるものではなく見えないものに意識を向ける運動”
あるいは“無意識が生み出す芸術”
と言った方がいいと思います。
 
日本語でも、前衛的だとか現実離れしている、と言う意味で
「シュールだね」なんて言いますね。
シュールは“~の上に”という意味のフランス語の前置詞です。
 
シュルレアリスムの展覧会はかなり久しぶりだったのですが、
今回の展示はシュルレアリストたちが実践していた
「遊び」に注目している、という点に関心があって
出かけてみました。

最初の部屋には、彼らの自作のチェスやタロットカードがありました。
占い師(現在開店休業中)でもある身としては、
オリジナルタロットのデザインに大変興味をひかれました。
通常のタロットに
は聖杯、剣、棍棒、金貨の4種のマークがあるのですが、
彼らが作ったカードでは、炎、車輪、星、鍵穴がマークになっています。

また人物カードには、実在の人物や身近な人物をモデルにした
イラストを使っていて、これもユニークな発想だと思いました。
 
4人の作家による『甘美な死』という作品は、
顔、上半身、腰、脚を、別々の人が順に描いたもの。
ただし前の人がどんな風に描いたかを見ないで続きを描くので、
当然化け物のような不思議な生き物が完成します。
 
これを文章に置き換えた遊びをしたことがありませんか?
いつ、誰が、どこで、何をした、をそれぞれ違う人が書いて
文章を作る、というあれです。
思わずふき出してしまう文章が出来上がりますね。
遊びと偶然が生みだす芸術。
これぞシュルレアリスムの魅力☆
 
会場では、子供たちが実際にこの文章遊びが出来るコーナーが
設置してありました。「あなたもシュルレアリスト!」
と題して、他にも色んなワークショップをやっています。
 
シュルレアリストらが発案した遊びのような技法には
ほかにも、
●コラージュ(絵や写真を切りぬいて貼りあわせる)
●デカルコマニー(画用紙に適当に絵の具をおいてから、
それを二つ折りにし、強く押してふたたび開く)
●フロッタージュ(デコボコのあるものの上に紙をおいて、
鉛筆を寝かせてこすり、模様を写し取る)
などがあります。
これらの技法を使った作品もたくさん展示されています。
 
そして当然、有名な作品も!
マルセル・デュシャンの『L.H.O.O.Q.』と
『ひげをそったL.H.O.O.Q.』←ただのモナリザ(笑)!!
マン・レイの『アングルのヴァイオリン』などなど。
 
ダリ、マグリットデ・キリコデルヴォーなどの、
初めて実物を見る作品もあって、大満足の展覧会でした。
クスッと笑える作品や、なんじゃコリャ?と見入ってしまう作品ばかり。
無意識をたくさん刺激されたような気がします。