ジャック・カロ展

国立西洋美術館で開催中の
「ジャック・カロ~リアリズムと奇想の劇場~」
(6月15日まで)に行きました。
HP:http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2013callot.html
 
カロは17世紀のフランスの版画家で、イタリアでも活躍しました。
私がカロの作品でなじみがあるのは
「戦争の悲惨」という連作の中の『絞首刑』。
これは大木にたくさんの首吊り死体がぶら下がっている絵で
三十年戦争(1618~1648年)の惨禍を表しています。
本来は版画ですが、着色されたものもよく見かけます。
 
ドイツを戦場として断続的に戦われた三十年戦争では
多くの傭兵が活躍しましたが、戦いが一段落すると
仕事を失った傭兵たちが略奪や暴行に走ることが多々あったため
ときに傭兵隊長は規律を守るために、部下を処刑せざるを
えなかったのです。
この絵は、敵方につかまって吊るされた兵士ではなく、
残虐な行為によって罰を受けた傭兵たちなのでした。
 
今回の展覧会の目玉は「インプルネータの市」。
この村で毎年聖ルカの祝日(10月18日)に開かれる市の様子を
緻密に描いています。
※ちなみに福音書記者のルカは医者でした。
聖路加病院の聖路加とは、聖ルカのことです。
 
食器を売る人、ヘビ使い、手相を見るジプシー、
ダンスをする人々、けんかをする男たち、
荷車をひくロバが転んで荷物がこぼれてあわてる人、
などなど楽しい場面が散りばめられています。
 
この作品のそばには、アップで見たいところを拡大できる、
タッチパネル式の画面“みどころルーペ”がおいてあり、とても便利でした。
(会場入り口で本物のルーペを借りることもできます。)
 
そして昨日の続きのハナシですが、
この展覧会ではコンメディア・デッラルテの人物を
題材にした作品もいくつか展示されています。
『ふたりのザンニ』や、連作「パンタローネ」の中の『カピターノ』
などがそれにあたります。
 
カロが宮廷画家として仕えたメディチ家トスカーナ大公
コジモ2世は、コンメディア・デッラルテが大のお気に入り
だったそうです。
 
その他の作品で気に入ったのは、「聖アントニウスの誘惑」。
作者が誰であれ、とにかくこのテーマの作品はみんな面白いから好き。
 
それと「ラ・プティット・テーズ」という聖母をテーマにした
少し大型の作品。聖母を取り囲む人々が22人でヘブライ語
アルファベットの数と同じ。かつ、その一人ひとりが手にしている
盾にヘブライ文字が刻まれていて、何か深い意味が
秘められてそうな雰囲気でした。
 
いやーとにかく細かい白黒作品ばかりで、
目が超疲れた~。
 
  ★  ★  ★
 
同時開催の「非日常からの呼び声~平野啓一郎が選ぶ
西洋美術の名品~」展では、
しばらく見ていなかった常設展示室の作品を見ました。
妙に懐かしい・・・。
収蔵していても普段は展示していない作品が
見られたのもラッキーでした。
デューラーの緻密な版画が素晴らしい(また版画)。
あと、G・モローもいいですよ。

では、今夜はこれにて。