読了『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』

塩野七生さんの最新刊(たぶん)です。
神聖ローマ皇帝フリードリ
ヒ2世については
私も前々から興味があり、いつかちゃんと調べよう、
なんて思っていたら先を越された感じ。でも
塩野さんの方が、私なんかよりずっと長いこと
いつか書こういつか書こうと思っていたそうです。
 
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フリードリヒ2世(13世紀前半)は一言で言うと、
「中世」を生きながら時代を先取りしすぎたために
異端の皇帝になってしまった人。
 
彼はシチリア島の出身ですが、この地中海のど真ん中にある
シチリア島というところは文化文明のるつぼ。
古くはギリシア人やフェニキア人が、次にローマ人が支配し、
ローマの滅亡後はビザンツ帝国領となり、そこへ
すぐ向かいのアフリカ大陸からイスラム教徒がやってきた
かと思えば、フランス北東からノルマン人(ゲルマン人の一派)
がやってくる・・・。
 
そんな土地で育ったがために、彼はヨーロッパの諸言語
のみならずアラビア語まで自由に話し、どんな宗教の人とも
分け隔てなく付き合ったのです。
世間が対イスラム教徒の十字軍に燃えている時代にです。
 
彼自身もローマ教皇に命じられて仕方がなく
十字軍遠征に出かけますが、イスラムの指導者との
話し合いによって平和的にイェルサレムを回復したことが、
教皇の怒りに触れ、破門されてしまいます。
 
教皇の考えでは、聖地はキリスト教徒が血を流して
敵から必死に奪い返すべきものだったからです。
目の前にいる異教徒を殺さず、話し合いをするとは何事か!
キリスト教世界の皇帝のあるまじき行為!
というわけ。
 
中世はキリスト教に縛られた「暗黒時代」だとは
よく言ったものです。この本を読んでいると
当時のローマ教皇ってアホだな~と思ってしまいます。
典型的中世人である教皇と、近代人に近い精神をもっている
皇帝の、真っ向からの対立がとても面白い!
苦笑の連続。
中世真っ只中にこんな進歩的かつ魅力的な人物がいたのか、
と感心しきりです。まあ、塩野さんが書くと、みんな
かっこいい男になってしまうのですが。
 
日本人にはあまりなじみのない人物かもしれませんが
ヨーロッパ史を多少ご存知の方なら、
このフリードリヒ2世が、あの第三回帝王十字軍に参加した
(戦闘前に事故死)フリードリヒ・バルバロッサ(赤ひげ王)
の孫だ、といえばお分かりになるかと思います。
 
フリードリヒ2世についてのひとりごと、
来週に続きます・・・。