テミストクレスのオストラコン

『300 帝国の進撃』を見ました。
実際には
テルモピュライの戦い(前作)のすこし後に起こったはずの
サラミス湾の海戦を、テルモピュライと全く同時期の出来事と
設定しています。
 
今回の作品では、あの化け物じみたクセルクセスが
どうしてあのような風貌になったのか、その秘密が
明かされました。
ペルシャ帝国の神王、クセルクセス(原作)↓
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映画ではクセルクセスの父である、大王ダレイオス1世が
マラトンの戦い(テルモピュライの10年前の戦闘)に
親征しており、その際にテミストクレスが射た矢によって
死に至ったことになっていますが、これも演出。
ダレイオスは親征していません。

また、マラトンの戦いのときにアテネ軍を指揮したのは
テミストクレスではなくミルティアディスという人物です。
歴史映画を見ると、ストーリーを楽しむ一方で史実と比較してしまうのは、
すでに職業病ですな。
あ、エヴァ・グリーンのアルテミシアは期待通り良かったです。
いまのところ、悪女をやらせたらこの人の右に出るものはいません。
 
最後の方で、テミストクレス義経の八艘飛びよろしく、
船から船へ(しかも騎馬で)飛び移るのはちょっとやりすぎかな・・・。
ちなみにこの映画、ほぼ全てのシーンがブルーバックで撮られていて
(つまり俳優以外はコンピューターによる作り物)、あれだけ海が出てくるのに、
水は一滴も使われていないそうです。
 
さて、サラミス湾の海戦(紀元前480年)で活躍したテミストクレスですが、
実はその後、紀元前471年ごろに行われた陶片追放の結果、
母国アテネを追われる身となりました。
陶片追放オストラシズム)とは、僭主(独裁者)になりそうな人物つまり
アテネの政治を独占しそうな悪い政治家の名前を、陶器の破片に書いて
投票するもの。高得票者は10年間国外追放となります。
 
アクロポリスの斜面で、テミストクレスの名を刻んだ陶片(オストラコン)が
大量に見つかっていて、おそらくは反テミストクレス派の組織票と思われます。
陶片追放は政敵に悪用されることもしばしばありました。
 
「ネオクレスの子、テミストクレス」と刻まれた陶片は
現在、アクロポリスのふもとにあるアゴラ博物館などで
見る事ができます。
 
実物(丸いのは壷の口の部分)↓
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 こちらにはテミストクレス以外の人物の名も見られる↓
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