『パリよ、永遠に』


この映画は第二次大戦中、パリを放棄するさいに
その破壊を命じられたナチスの将校と、
破壊を思いとどまらせようと説得を試みる男との、
駆け引きの物語。たった一夜の話。

ナチスの将軍とは、コルティッツ将軍のこと。
そして説得するのは中立国スウェ-デンの大使ノルドリンク。
舞台は老舗ホテル、ル・ムーリス。

かつての『パリは燃えているか』でも取り上げられたテーマですが、
私はこれを見ていないので、今回の作品がそれとどう違うのか、
あるいは似ているのかは知りません。

見ている途中で、おや、これは密室劇だな~、
映画にする必要あるのか?と思ってしまいました。
で、エンドロールをよく見ていたら
やはり原作のあるお芝居の映画化だったようです。
しかもキャストまで舞台と同じだとか。
うーん、二匹目のどじょう・・・。

ほとんどの場面がホテルの室内なのですが、
その部屋はナポレオン3世が愛人を囲っていた部屋で、
フロントを通らずに裏通りから直接入れるヒミツの階段がある、
ということでした。
舞台となったル・ムーリスは現存するホテルですが、
それが本当なら面白い☆

私は今までコルティッツが自分の意思でパリの破壊を
思いとどまったのだと思っていました。
しかし映画では、コルティッツは初め、
ナチス軍人として
総統の命令に従うのは当然のことだと、なんのためらいもなく
淡々とパリ破壊計画をすすめていきます。

そこにノルドリンクが現れ、彼の人間としての良心に訴えかけます。
ドイツの敗色が濃くなっているいま、パリを破壊すること
よりも、パリを破壊しないことが、君を英雄にするのだ、と。
やがて、実はコルティッツが家族を人質にとられるような形で
ナチスを裏切れば家族が逮捕・処刑される)
パリに赴任してきていることも明らかになります。

軍人としての使命と個人的な感情との間で苦渋の選択を
せまられる中で、徐々にノルドリンクに説得されていく様子が
丁寧に描かれていました。

確かに二次大戦では、ドイツ中の都市、歴史ある美しい街が
連合軍の爆撃によって灰燼に帰したわけで、
同じようにパリを破壊してやりたい、という
ヒトラーの気持ちも分からないではないです。
すべて破壊対象だったなんて・・・考えるだけでも恐ろしいです。
本当にコルティッツ将軍の英断に感謝(合掌)。

決して派手さはないですが、いぶし銀のじーさんふたりが主役の
渋い映画でした。
見にきたお客さんも年配の方が多かったです。平日の昼でしたが
ほぼ満席でした。
では、今日はこれにて。