『ダークエイジロマン 大聖堂』

海外ドラマ「大聖堂」を見ました。
原題は「The Pillars of the Earth」。中世のイギリスを舞台にし
たテレビシリーズ全8回。ケン・フォレットという作家による歴史小説の映像化。かつてNHKで放映されたこともあるそうです。
映画『グラディエーター』のリドリー・スコットが製作総指揮とい
うこともあり、以前から興味がありました。
紹介ページhttp://daiseidou.net/
(予告編が見られます)

舞台は中世、といっても12世紀のイギリス国内。
十字軍でもなく、百年戦争でもなく・・・なんとマイナーな。
と思いきや、結構どろどろのお家騒動があったのですねえ。

物語は世継ぎである王子の乗った船が海に沈む場面から始まります
この王子とはノルマン朝第3代国王ヘンリー1世の嫡男ウィリアム。ウィリアムはホワイトシップ号という艦船でイギリス海峡を渡る途中、船が難破して亡くなります。
同時に随員であったイギリスノルマンディー公国(当時イギリス王が有していたフランス北西部の領地)の王族や貴族などの多くが命を落としたショッキングなニュースでした。

さて嫡男を失ったヘンリー1世は神聖ローマ皇帝に嫁いでいた娘マティルダを呼び戻し(皇帝は既に死亡)、王位を継承させようとします。彼女がいわゆる女帝モード。
ドラマでも「マティルダ」は「モード」と発音されています。
ところがマティルダのいとこにあたるスティーヴンがそれに異を唱え、ヘンリー1世の死後はマティルダVSスティーヴンの王位をめぐる骨肉の争いが激化していきます。

ところで、乗員は全滅したと思われているさっきの海難事故。実はただ一人、生存者がいたのです。彼は王子を乗せた船が事故ではなく、陰謀によって沈められたことを知ってしまい・・・。
で、この男が主人公かと思ったら全っ然そうではなく、主人公は自分の手で大聖堂を建造することを夢見ている大工のトムという男。
はじめのうちは仕事を求めて旅をするトムとその家族が物語の中心。彼らはやがて、ある修道院門前町に腰を落ち着けますが、王家の騒動は修道士やトムたち庶民の生活にもさまざまな影を落としてくるのです。

あらゆる身分や職業の人物がたくさん出てくるとても複雑な物語で、野心に満ちた貴族や司教がみんなこうもりなので、途中で対立の構図がよくわからなくなることも(汗)。中世の色々な階層の人々の生活や実態がよく描かれていると思われます。

最後の方では、主要人物の一人がフランスにわたり、あのサン・ドニ大聖堂の建築現場で修業を積むという場面も出てきます。ほんのちょこっとですが、サン・ドニ修道院長シェジュールが出てきたのにも感激!

サン・ドニ大聖堂の紹介記事はこちら↓

当時はちょうどロマネスクからゴシックに建築様式が移り変わる時期なので、サン・ドニで学んだ彼はイギリスに帰ってトムが作り始めた大聖堂をゴシック様式で完成させるのです。
物語のなかで飛梁(フライング・バットレス)の必要性について述べている場面があり、そうそう、それこそが高い天井を可能にし尖塔アーチを外から支えるゴシック建築の最大の特徴なんですよ!と一人で興奮していました。

このドラマはキャストも豪華。いま売れっ子のエディ・レッドメインをはじめとして、ドナルド・サザーランドルーファス・シーウェルやマシュー・マクファデンが出演!
最近日本のテレビがくだらないバラエティばかりで面白くないなあと思っている西洋史ファンのあなた!←わたし?
ぜひDVDでお楽しみください。(回し者じゃありませんが。)

本国ではすでに続編もドラマ化され放送されたそうです。続編は百年戦争に時代が飛んでいて、最初の登場人物は出てこないらしい。日本ではいつ公開されるのかわかりませんが、楽しみに待ってます☆

エディ・レッドメインといえば3月に公開される映画も気になっています。世界で初めて性転換手術をうけた性同一性障害のデンマーク人男性の実話です。
原題は『The Danish Girl』。邦題は『リリーのすべて』。
公式HP:http://lili-movie.jp/