Gloomy Sunday

いま、台風が本州を通過しています。
風と雨に閉じ込められた、
陰鬱な夕べにふさわしい話を。

ときは1933年。
ドイツでは前年の総選挙でナチスが第一党となり、
この年の1月にヒトラーが首相に就任。
 
あくまでも合法的に政権を獲得した、
あのちょびヒゲの国粋主義者が、
世界を二度目の世界戦争へと導こうとするころ、
東欧のハンガリーで、ある歌が発表されました。
題名は「暗い日曜日」。

ブダペストの、とあるレストランで
ピアノを弾いていた男が作曲し、別の男が歌詞をつけました。
美しくも物憂げな旋律。
失恋を苦に死を選ぶ女性の心情をうたった歌詞。
発表されるや、大ヒットしました。
 
3年後には歌詞が翻訳されフランスの女性歌手
ダミアが歌い、これまたヒット。
「Sombre Dimanche ソンブル・ディマンシュ」は
シャンソンの定番曲となります。
 
しかし、それからおかしなことが。
ヨーロッパやアメリカで、
この曲を聴きながら自殺する人が続出したのです。
首吊りをした人の部屋で、鳴り続けるレコード。
この曲のレコードを抱いたまま川に飛び込む人。
この曲を、店でリクエストした直後に、ピストルで頭を
打ち抜いた人。
・・・などなど。
 
数百人の人々を自殺にかりたてた「暗い日曜日」は
いつしか“自殺の聖歌”と
呼ばれるようになりました。
ラジオなどでの放送を禁止した国もあります。

 
しかし。
その後の調査で、実際にこの曲が関係している
自殺はたった5件(ハンガリー国内)であることが判明。
“自殺の聖歌”は戦争へと突き進む不穏な世相が生み出した
都市伝説に過ぎなかったのです。イメージ 1
 

暗い日曜日」の作曲者をモデルにした
同名の映画があります。
ストーリーはまったくの創作ですが、
30年代の雰囲気を味わえます→。
 
また、映画「シンドラーのリスト」の中でも
BGMにこの曲が使われてる場面があり、
ドイツでも流行していたことがわかります。
 
 
日本でも、石井好子淡谷のり子越路吹雪
戸川昌子美輪明宏などのシャンソン歌手に
歌われてきました。
確かに歌詞は暗いですが、曲は哀愁をおびていて
印象的です。
 
ユーチューブなどで聞くことができますが、
もし、死にたくなってしまっても、
私は一切責任を負いませんよ。
あしからず。