子供に見せてはいけない絵本

「彼」に初めて出会ったのは、8年ほど前。
とある絵画展のグッズ売り場。
そこに「彼」の作品がありました。
 
中を見てみると、黒一色で描かれた奇妙なペン画と、
それに添えられた短い文章。それだけ。
 
なぜか胸がザワザワしました。
見てはいけないものを見てしまったような。
でももっと見たいような。
 
そのときはさんざん悩んだ末、その本を置きました。
でも、しっかりと、
「彼」の名前だけは、しっかりと覚えて帰ったのです。
 
「彼」の名はエドワード・ゴーリー
アメリカの作家です。その作風から、
イギリス人と間違われることも多いそうです。
彼の作品は確かに、切り裂きジャックが生きた
19世紀ヴィクトリア朝のイギリスや
ゴシック・ホラー小説を思い出させます。
 
そして本国アメリカでも、多くの人が、
書店で彼の絵本を手に取ってから、
レジまでの道を何度も行きつ戻りつするのだ、
と知ったとき、
私はゴーリーの作品を買っていいのだと、
いや、ぜひ欲しいという自分の本心に気づきました。
それから少しずつ、彼の絵本を集めています。

評価は真っ二つ。
気味が悪い、悪趣味、なにが良いのかわからない。
または。
ブラックユーモアもここまでくれば潔い。
不条理だからこそ妙に惹かれる。
哲学的。見るたびに発見がある。
 
私が最初に買ったのは、偶然古本屋で見つけた
『ギャシュリークラムのちびっ子たち』。
内容は、名前のアルファベット順に
子供たちが悲惨な死に方をしていく、だけ。
裏表紙には26の墓石。
 
ゴーリーは多作なので、そんな話ばかりではありません。
でも子供が好きな方は、読まない方が無難です。
特に『おぞましい二人』は絶対に読まないでください。
 
後悔を恐れない方は、アマゾンで各作品の内容や
レビューをごらんになってみてください。
ハマッてしまう人もけっこういます。
 
『優雅に叱責する自転車』とか
『うろんな客』『まったき動物園』なんて
タイトルだけで心ひかれます。
 
私のお気に入りは、英語の先生でも知らなさそうな
副詞のオンパレード『華々しき鼻血』。
 
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翻訳者の柴田元幸氏いわく、
“副詞というものに栄光を与えた書”
“言語遊戯の歴史の中でも特筆すべき一冊”。
しかも副詞たちはアルファベット順に登場。
 
日本語版の場合、この柴田さんの訳がすばらしく絶妙で、
作品の魅力を引き出しています。
(原文も併記。
作品によっては韻を踏んでいるので、英文にもご注目を。)
 
ゴーリーはホラー小説の挿絵や、
ミュージカルのポスターなども多く手がけていて、
あの「キャッツ」の原作となった
T・S・エリオットの詩集のネコたちも彼の絵です。
また、衣装デザインと舞台装置で
トニー賞も受賞しています。
 
 
 
 
さて、あなたの評価はどちらでしょうか??