ムセイオン18 羊皮紙

以前にムセイオンで世界最古の紙パピルスを紹介しました。
前の記事:http://blogs.yahoo.co.jp/moralehistorya/31564599.html
 
紀元前3世紀、パピルスに代わって登場したのが、
今日ご紹介する羊皮紙です。
パルプから作る紙が普及する以前の中世ヨーロッパ世界で
広く使われていました。
 
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文字通り、羊の皮(革)から作られています。
地図が印刷されているこちら側が肉側、
裏のざらざらしているほうが毛側です。
羊皮紙発祥の地であるトルコのペルガモンで入手しました。
英語のパーチメント(羊皮紙)という言葉は、この地名からきています。
(羊ではなく仔牛の皮を使っているものはヴェラムと呼びます。)
 
ペルガモンは紀元前3~前2世紀に、現在のトルコ西部に栄えた
ペルガモン王国の首都です。
ヘレニズム世界第2の都市として繁栄を極めました。

世界第1の都市はエジプトのアレクサンドリア
有名な大図書館がある都市です。
しかしペルガモンにも200万冊の蔵書を誇る図書館があり、
その発展ぶりを妬んだアレクサンドリア市は
ペルガモン王国へのパピルスの輸出を諸国に禁じました。
 
そこでペルガモンの王エウメネス2世が、パピルスに代わる
新たな紙のアイディアを募集し、懸賞をかけたところ、
スミュルナ(現在のトルコのイズミール)のクラテースという人物が、
羊の皮を石灰水に浸して加工した羊皮紙を開発したのです。
 
羊皮紙の作り方を簡単に紹介しましょう。
まず皮をよく洗って数日間水につけ、汚れを吐き出させます。
次に石灰水(運動場の白線を引く消石灰の溶液)に
10日間ほどつけて石灰をよく浸透させます。
そののちキレイに脱毛してあげ(笑)、残っている肉も削りとって、
再び10日ほど石灰水につけこみます。
今度はそれを四方八方から引っ張って、四角い木枠の内側に固定。
乾かしてから、
裏表を湾曲した鋭利なナイフでよ~くそいで薄くします。
↓中世の絵

 
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完全に乾燥したらできあがり。
あとは必要な大きさにカットするだけ。
ペルガモンに行ったとき、この木枠にはまったままの
状態で売られている羊皮紙もありました。
 
日本でも欧米でも入手困難なこの羊皮紙を、
自分で作っている日本人の研究者が横浜にいて、
その方の羊皮紙作り講座がもしあれば受けたいと思っているのですが、
なかなか機会がありません。
いつか自分の手で羊皮紙をそいでみたいなあ。