八、はち、8

八は末広がりで縁起がいい、といいますが、
八方除け、とか、「八卦よい」とか、
八はまじないに関する言葉によく出てきます。
八角形の鏡も魔除けによく使われます。
 
天武天皇とその妻である持統天皇の合葬陵が
八角形なのは、天武天皇道教マニアだったことに
由来しますが、八に神秘的な力を感じるのは
日本や中国だけではないようです。
 
仏教では釈迦が「八正道」を説き、
北欧神話の主神オーディーンの愛馬は8本足です。
ノアの箱舟に乗って助かった人間は8人。
(船という字をよく見ると・・・舟の横に八と口。
口は人の数を表します。人口、というでしょ。
なーんて、これは冗談。)
 
先週触れた、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世が建てた
城の中に、世界遺産に指定されていながら、
その用途がまったく不明な謎の城があります。
八角形をした、カステル・デルモンテデルモンテ城)です。
残念ながら、イタリア南部にあるこの城を私はまだ
訪れたことがないので、ウィキペディアから写真と平面図を拝借。
 
イメージ 1
 
イメージ 2

フリードリヒは100以上の城塞を建てており、
いずれもが戦略的に重要な地にあって、役割がはっきりしています。
しかし、見晴らしのよい小高い丘の上にポツンと佇む
このデルモンテ城だけは、堀もなく、要塞でもなく、
あきらかに無防備で、武器をすえつけるような場所さえも
ありません。
馬小屋も食糧倉庫も調理場もなく、ただ8で埋め尽くされた
この城が一体どんな目的で造られたのか・・・。
多くの研究者がその謎解きに挑んでいます。
 
今回の塩野さんの著書では、上巻にこの城の外観の写真が、
そして下巻にはこの城の中庭から空を見上げた写真が
使われており、実際に行って見てみたい!という
気持ちを掻き立てられます。
 
8は、はるかメソポタミア文明の時代から神秘的な数とされ、
特に「楽園の数」とされていました。
イスラム教においても、楽園は8つあるとされ、
八角形は楽園を意味します。
またアラビア数字の8を横に倒すと無限大になることは
誰しもお気づきでしょう。
イスラム文化に造詣の深かったフリードリヒならでは
デザインといえます。
この城は現在イタリアの10セント(10分の1ユーロ)コイン
にも描かれています。
 
さて、最後に。
フリードリヒ2世といえば、こんな話を思い出します。
諸言語に精通していた彼は、「人間は誰にも言葉を
教わらなかったら何語を話し出すのだろうか」と思い、
ある赤ん坊の世話をする者たちに、赤ん坊に一切話しかけては
いけない、と命じました。
するとしばらくして、その赤ん坊は死んでしまいました・・・。
 
たとえ食事を与えられていても、他者とのコミュニケーションが
なければ人間は生きられないのだということの例として、
昔この話をなにかで読んだのですが、いまとなっては出典が
わかりません。
この話の真偽について、またその出どころをご存知の方、
ぜひ教えて下さい。